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長谷川真裕美(薬学博士)のインタビュー記事:サターラの医薬品開発エキスパート

Wherever the art of Medicine is loved, there is also a love of Humanity.(人間への愛のあるところに医学への愛もある)

– ヒポクラテス

医学の父、ヒポクラテスのこの言葉を思い浮かべるとき、サターラの同僚である医薬品開発サービス部シニア・ディレクターの長谷川真裕美(薬学博士)のことを思い浮かべずにはいられない。臨床薬理学とファーマコメトリクスの分野を中心に 15 年以上にわたり医薬品開発に携わっているのがサターラの長谷川だ。彼女はアジア太平洋地域(APAC、日本・韓国・台湾)のクライアントへのコンサルティングサービスやサポートを専門としている。患者のためになる革新的な医薬品の開発に貢献したいという彼女の愛情は明らかだ。しかし、彼女と話す中で、そのポジティブなマインドと、それぞれが責任をもってミッションを果たすという企業文化を手助けをしたいという情熱にも心を打たれた。ヒポクラテスのように、彼女の人類に対する愛は明らかに輝いている。読者の皆さんにも、この対談のハイライトを楽しんで頂けると嬉しい。

写真:Mayumi Hasegawa(長谷川真裕美), Senior Director, Certara Drug Development Service

スザンヌ・ミントン: 製薬大手の管理職から、サターラのコンサルティング職への転職に迷いはなかったの?

長谷川真裕美:サターラでは、アジア関連の開発プログラムや、APAC地域の規制当局への新薬申請に取り組むクライアントをサポートしています。サターラのモデルを活かした医薬品開発 (MIDD) 機能をアジアのお客様に幅広く提供しているんです。私の場合、規制当局とクライアント、あるいはクライアント企業の日本法人とグローバル本社との橋渡しのような役割を果たすことが多いです。製薬会社時代の私がそうだったように、サターラのお客様は、MIDDを活用しながら科学的データを咀嚼して今後の意思決定に活用することをサターラに期待していると思います。MIDDを活用するメリットを広くお伝えしたく、サターラに入社することを決めました。

以前製薬会社で働いていた際、経営陣からは開発プログラムに臨床薬理戦略を組み込むことのメリットを他部門に教育することを期待されていました。私は知識を整理して統合し、意思決定に役立つ複数の定量的ソリューションを取り入れる戦略を開発しました。それぞれのプロジェクトにオーダーメイドのソリューションを提案して変化をもたらすことにやりがいを感じています。MIDDを取り入れる最大の価値は、複数のソースからデータを統合し、タイムラインとコストの両方を削減し、医薬品開発の効率を高められることです。規制当局の承認プロセスにおいても、MIDDは重要な開発決定の根拠を説明してくれます。

製薬会社での職務では、チームメンバーが一丸となって意思決定を行っていました。一方、サターラのコンサルタントである私は、クライアントに納期通りの成果物を提供するために、公開データや社内データ、その分野の専門家 (SME) の助言を取り入れて提案を行います。サーターラでは「医薬品開発のコンシェルジュ」のような役割を果たすため、お客様へのアドバイスは常にプロフェッショナルでなくてはならないですし、十分な配慮が必要であると認識しています。

スザンヌ:真裕美は米国(BMS)と日本(武田薬品)の両方の医薬品開発企業で働いた経験があるけれど、外資系企業と日系企業において医薬品開発に対するアプローチに顕著な違いはあると思う?

長谷川: 武田薬品は日本の企業ですが、1970年代後半からグローバルな医薬品開発プログラムを支援してきました。両社は、米国、EU、日本を主要市場として承認取得を目指しています。

とはいえ、BMSにてアメリカのビジネス環境で過ごす中で、気づいたこともあります。アメリカと日本のビジネス文化は大きく異なります。アメリカでは、ワーキングマザーも管理職として重要な役割を担い、プライベートではパートナーと家事育児を分担している方がたくさんいます。BMSプリンストン支社で勤務していた時、私は、スタッフが同僚を尊重しながらも、個人として役割を自覚し、自立して働くという文化に刺激を受けました。BMSジャパンの臨床薬理開発責任者に就任してからは、チームのために定期的に専門能力開発ワークショップを開催し、各分野でリーダーとして活躍できるようサポートしました。

スザンヌ:では、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)の主な規制動向について教えてもらえる?

長谷川: 近年、PMDAの審査スピードは米国FDAに迫る勢いです。注目すべきは、2015年に導入された「サキガケ指定制度」と厚生労働省の「条件付き・期限付き販売承認制度」です。制度の目的は、緊急度の高い医薬品を世界に先駆けて日本の患者さんに提供することです。比較的早い段階で指定され、優先的に治験の相談や審査が受けられます。

スザンヌ:海外の企業が日本にて医薬品の製造販売承認を取得する際、またその逆の場合もしかり、やってしまいがちな判断ミスはある?

長谷川: 私はPMDAと何度もやり取りをしてきましたが、PMDAはスポンサーの革新的なアプローチを受け入れつつあります。

そうはいっても、PMDAは新薬承認申請前に日本の患者を対象とした臨床試験を実施するよう求めています。PMDAは、特に希少疾患領域や 小児適応症においてモデルベース・アプローチを容認しているとはいえ、常に日本人患者における医薬品の有効性/安全性/薬物動態(PK)プロファイルを重視しています。外資系企業がこの点を無視すれば、PMDAとのやりとりに悪影響を及ぼす可能性もあります。

スザンヌ:PMDAは、医薬品開発科学における次の重要な進展を「合理的な医療」、すなわちエビデンスに基づく医療を採用し、患者に個別化された医薬品を提供することだと提唱しているよね。サターラとして、日本企業がPMDAのこの目標を実現するためにどのような支援ができるか聞かせてくれる?

長谷川: サターラにはたくさんの前臨床の専門家、ファーマコメトリクスの専門家、臨床薬理学者、メディカルライターが所属しています。医薬品開発のあらゆるフェーズで MIDD を提案・活用する能力を備えているんですね。すでにたくさんのお客様に最先端の定量的ソリューションを提供し、医薬品の承認をサポートしています。生理学的薬物動態モデリング (PBPK)、母集団薬物動態学、曝露反応モデリング、定量的システム薬理学 (QSP)、モデルに基づくメタ解析 (MBMA) などのモデリングアプローチはすべて、サターラがクライアントのプロジェクトに導入している強力なアプローチです。

薬剤や疾患のメカニズムを理解するためには、大規模で複雑なデータセットや、臨床試験で得られる以上のデータを使用する必要があります。サターラの多様なチームには、リアルワールドデータ (RWD) や科学インフォマティクスの専門家も所属しています。このような多様なスキルセットを持つチームを頼ることで、前例のない医薬品開発の課題を解決するための選択肢が広がるのではないでしょうか。

スザンヌ:モデルを活かした医薬品開発(MIDD)技術の導入について、米国と日本の違いはある?

長谷川: PMDAもモデリング&シミュレーションのアプローチを取り入れています。日本の個別のガイダンスが複雑なこともあり、国際整合化会議(ICH)ガイダンスなどのグローバルなガイダンスに加えて注意を払う必要があります。また、FDAとPMDAの間には、申請時に考慮しなければならない若干の違いもあります。例えば、試験デザインの最適化において、MIDDは少人数またはリクルートが困難な患者集団における単回投与試験を正当化し、最適な投与レジメンに関する添付文書勧告に情報を提供するために使用されます。インシリコモデルはまた、臨床データを新しい集団(小児、高齢者など)に橋渡しし、それに応じて添付文書の拡張を通知するのにも役立ちます。

スザンヌ:どうしてサターラに入社することにしたの?

長谷川: 私はレギュラトリーサイエンスを次のレベルに前進させることに情熱を注いでいます。ICH E11A(小児の外挿)の専門家ワーキンググループに所属していたとき、グローバルガイダンスを調和させるために、世界の規制当局や業界の中小企業と幅広く議論していたのですが、そこで非常に多くのことを学びました。サーターラは、MIDD を導入するために必要な方法論や戦略に苦慮している製薬企業のクライアントを支援できる魅力的な企業でした。実際入社してみて、サターラの優秀なコンサルタントと仕事をするのはとても楽しいですし、彼らの専門スキルを日本の医薬品開発プログラムに生かせることに喜びを感じています。

スザンヌ:キャリアをスタートさせたばかりの臨床薬理学者やファーマコメトリシャンにアドバイスを送るとしたら?

長谷川: 臨床薬理学とファーマコメトリクス(CP&P)は非常に幅広い学問分野なので、一人前になるまでの道のりは非常に長く、困難に見えますよね。でも大丈夫です。努力も苦労も必ず報われます!意志あるところに道は開けるのです。モデリング&シミュレーション、データハンドリング、臨床試験デザイン、規制当局との交渉など、臨床薬理学とファーマコメトリクスのあらゆる側面を楽しんでください。CP&Pには解決しないといけない課題が山積みですので、私は自分の仕事において過剰にも思える努力をすることに日々喜びを感じています。プロジェクトで直面する課題が大きければ大きいほど、そこから得られる経験も貴重なものになりますしね。

スザンヌ:最後に、読者の皆さんに伝えたいことがあればお願いします!

長谷川: 個人的なことですが、私は母親であり、子供たちには不可能を可能だと思える世界で育ってほしいと願っています。

私は、医薬品開発者が希望と楽観性を持って医学最大の課題に取り組めるよう支援することに情熱を注いでいます。イノベーションが最も難治性の高い病気の治療法につながり、生命を脅かす病気が治療可能になる未来を目指しています。科学者たちは、自分たちの研究を「単なる研究」と見なし、真の社会変革の原動力とは見なさない傾向があります。私たちはこのような考え方を改め、研究者が外部のステークホルダーや潜在的な協力者、科学者以外の人々ともっと積極的にコミュニケーションをとるよう推奨しなければなりません。

学際的なアプローチを駆使する若い起業家たちは、世界的な健康問題の解決に大きく貢献していくと思います。私自身は、より多くの学際的・国際的な医薬品開発の共同研究に貢献したいと考えています。大規模な研究を支援するためには、各国の異なる科学コミュニティ間の協力が不可欠です。科学外交には、外交官だけでなく、研究者、エンジニア、ビジネスリーダーも積極的に参加し、最終的に患者さんのためになる国境を越えた解決策を生み出すべきだと私は考えます。

— To see the Japanese translation, click here


長谷川真裕美氏にインタビューできたことは大変光栄である。現代の医薬品開発をサポートするために学際的アプローチがいかに重要かという彼女の指摘に心から賛同した。

筆者について

Suzanne Minton
By: スザンヌ・ミントン
Suzanne Minton 博士は、コンテンツ戦略担当ディレクターとして、サターラのThought Leadership Programの基盤である、教育的かつ説得力のあるコンテンツを開発するライターチームを率いています。マーケティング部に10年以上勤務しながら、感染症、がん、薬理学、神経生物学の生物医学研究にも従事しています。スザンヌはデューク大学で生物学の理学士号を、ノースカロライナ大学チャペルヒル校で薬理学の博士号を取得しました。

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