研究開発の概念を自信に満ちた意思決定に変える
定量的システム薬理学(Quantitative Systems Pharmacology:QSP)は、研究開発環境に変革をもたらし、医薬品開発プロセスにおける意思決定に有用な情報を提供する大きな可能性を秘めています。QSPでは、コンピューターモデルと実験データを組み合わせることによって、医薬品、生体システム、疾患経過の関係性を探索します。膨大な量の生物学的および薬理学的データを活用する性能を備えたQSPの手法を活用することで、疾患の病態生理の理解を実現します。その理解に基づいて仮想の患者集団を用いた臨床試験シミュレーションを実施し、治療戦略の同定や検証が可能となります。
サターラは、再現性に優れたモデル構築を支援する頑健な規制対応ソフトウェアプラットフォームを開発することで、QSPにおけるアプローチの差別化に取り組んでいます。現在、免疫原性とがん免疫を対象としたソフトウェアプラットフォームを開発しており、今後神経変性疾患に対しても同様のプラットフォーム開発に取り組む予定です。これらのソフトウェアは、サターラが開発した高性能エディターツール上でご利用いただけます。操作性に優れたインターフェースを通してモデル構造と解析結果を再現性を持って出力します。この独自のアプローチは、米国、EU、日本の規制当局にも公開されており、創薬や開発、承認申請におけるQSPの活用促進に貢献しています。
需要が高まるQSP基調講演のハイライト:Piet van der Graaf博士による講演:定量的システム薬理学(QSP)の進化
定量的システム薬理学(QSP)の10年以上にわたる歴史に興味はありませんか?著名なQSP会議で発表されたPiet van der Graaf博士の興味深い基調講演をお聞きください。QSPがどのように進化してきたか、また、用量選択、バイオマーカー、臨床エンドポイントなど、実際のケーススタディを交えながら、規制当局の受容がどのように変遷を遂げているか講演しています。
QSPで最も複雑な課題に取り組む
2020年7月に開催されたワークショップにて、米国FDAは現在のQSP技術が「QSPの価値の正当化」から「ベストプラクティスの実装」段階に移行させる水準に達していると述べています。QSPによって、最新の開発化合物やモダリティ、併用療法、新規治療法の初回投与量など、開発計画における様々な難題に対する答えを見出すことが可能となります。
- 対象疾患の治療につながる薬理学的介入に関して、ある生物学的経路における最適な標的とモダリティは何か?
- 既存薬の治療有用性を併用療法によって向上させるにはどういったアプローチが必要か?
- 新規の作用機序に関して、非臨床データに基づいてヒトの反応や最適な投与量を予測可能か?
- 新薬開発につながる経路を特定するために、まずその根本的な病態生理の理解をどのように進めるべきか?
- 特殊集団もしくはその他の適応症に対して、薬物の効果を予測可能か?
- どのようにQSPによって、研究開発のトランスレーション、製品の差別化、バイオマーカーの活用を実現できるか?
- 患者特性に基づく投与量の個別化は可能か?
- 併用薬や遺伝子型による薬力学作用の変化を理解することによって、どのように臨床試験デザインを最適化できるか?
サーターラは現在、腫瘍学、ワクチン、神経学、中枢神経系、血液学、自己免疫疾患、希少疾患、皮膚科学、遺伝子治療などの治療分野において、上記の疑問に対応するためのQSPコンサルティングサービスと薬事サポートを提供しています。
免疫原性の影響を理解
生物学的製剤開発における近年のイノベーションにより、さまざまな治療領域においてタンパクなどを応用した治療薬の承認申請件数が著しい増加傾向にあります。生物学的製剤の成功実績が多く報告される一方で、免疫原性(Immunogenicity:IG)、つまり好ましくない免疫応答を引き起こす事象が、製剤特有の重大な課題として懸念されています。その結果、サターラは、QSP IG Consortium の 7 つのメンバーからの支援を受けて、多様な患者集団における生物製剤の IG と、それが有効性と安全性に及ぼす影響を予測するための QSP ソフトウェアプラットフォームを開発しました。
当社が開発するIG Simulatorは規制対応を実現したプラットフォーム上で動作し、創薬から臨床に至る全てのプロセスにおける意思決定をサポートします。さらに、ファーストインヒューマン試験のデータを取り込むことで、臨床第2および第 3 相試験デザインや疾患および併用薬の影響予測、異なる患者集団への外挿、さらに、用量調整によってIGを管理可能か予測することが可能となります。この画期的なモデルは、優れた頑健性を備え、生物学的製剤開発において優先すべき化合物候補の同定支援や開発計画の継続もしくは中止の判断に有用な情報が提供されると期待されています。
IGでの研究成果をもとに、ワクチン用の新しいQSPプラットフォームを開発しました。サターラ QSP ワクチン・シミュレータは、COVID-19、腫瘍、RSV の複数の患者集団に投与推奨量を提供するために使用されます。
免疫腫瘍(Immuno-oncology)治療の進歩
現在、がん免疫療法は単剤療法として対象患者集団の多様な種類のがんに対して大きな成果を挙げています。その一方で、併用療法の適用には依然として多くの課題を克服していく必要があります。QSPは併用療法における課題解決に非常に適しています。QSPモデルによって有効性を決定する多面的な相互作用を理解し、さまざまな患者集団に対するより適切な併用治療や用法用量の提案が可能となると期待されます。
サターラが設立したQSP Immuno-oncology(IO)コンソーシアムでは大手製薬企業 6 社と協力して、異なるモダリティの製剤さえも対象とした多様な併用療法の評価を可能とするQSP IO Simulatorを開発しました。QSP IO Simulatorでは、化合物の薬物動態、標的結合、作用機序に加えて、腫瘍や免疫のシステム生物学に関する知見が統合されています。本ソフトウェアプラットフォームの活用によって、新規の併用療法や二重特異性抗体のような複雑な生物学的製剤の臨床成績の予測が可能となります。サターラ IO QSP プラットフォームは、スポンサー固有のプロジェクトに積極的に活用されています。
神経変性疾患
QSPバイオシミュレーションは、生物学的システムに対する薬物の薬理学的効果の理解を促進します。新薬臨床試験開始申請(IND申請)のための最初の投与量に情報を提供するために、in vitroおよび動物データを追加することにより、モデルを「学習・確認」します。in vivoのデータを得るにつれて、バイオマーカーや、神経炎症と異なるミスフォールドタンパク質の相互作用など、多様な要因を統合するモデルを発展させ、臨床転帰を予測する枠組みを提供します。
遺伝子治療への期待
個別化医療と呼ばれるこの「治療」は、個々の患者の詳細なデータに基づいて、欠陥遺伝子を修復または強化するものです。一方、投与量が多すぎると、免疫原性の副作用が不可逆的に何年も続く可能性があり、非常に危険です。この針に糸を通すには、斬新な開発アプローチが必要です。
サターラのVirtual Twin-QSPプラットフォームは、複数の希少疾患遺伝子治療において、第I/II相および第III相試験の予測と情報提供において成功を収めています。各患者のコンピューター・シミュレーション・モデル(バーチャル・ツイン)を作成し、患者の様々な属性を再現します。何百もの仮想双生児を仮想試験でシミュレートし、さまざまな薬剤の投与量、スケジュール、組み合わせの影響を評価することで、各患者に最適な投与レジメンを予測することができます。この実績あるアプローチを用いて、AAVベースの遺伝子治療、ex-vivo、in-vivo、in-situ、リソソーム貯蔵、LNPベースのRNA、遺伝子編集、CRISPR/Cas9、CAR-T技術に取り組んでいます。
製薬業界(SanofiおよびPfizer)において20 年以上の経験があります。QSPプロジェクトに重要な技術と経験をもたらし、サターラの戦略的な開発に貢献しています。また、CPT のEditor-in-Chiefでもあります。