
ノーベルファーマ社のラパリムス®錠(シロリムス)は、米国ファイザー社が臓器移植の免疫抑制剤として販売している経口薬から開発されたノーベルファーマ社のオーファンドラッグです。mTOR阻害剤という特性から、アカデミアの医師や研究者が他の疾患への応用を活発に研究して、データを集めていました。こうした研究成果をベースに、ノーベルファーマ社は2014年に世界初のリンパ脈管筋腫症治療薬『ラパリムス®錠』の製造販売承認を取得しました。
2019年からノーベルファーマ社は岐阜大学小関医師と共同で、サターラの協力を得て、本薬の至適用量の決定を目的に、難治性リンパ管疾患患者を対象とした医師主導治験、難治性脈管腫瘍・脈管奇形患者を対象とした特定臨床研究、難治性リンパ管疾患患者を対象とした臨床研究、健康成人を対象とした臨床試験及びリンパ脈管筋腫症患者を対象とした臨床試験で得られた全血中本薬トラフ濃度(141 例、963 点)に基づく「非線形混合効果モデルを用いた母集団薬物動態(PPK)解析」を実施しました。
本解析の結果、ラパリムス®錠の薬物動態に影響を及ぼす変動因子を特定し、本薬の曝露量はアロメトリー則に基づく体重補正並びに成熟度補正を組み込んだ一次吸収過程を伴う2-コンパートメントモデルにより記述されました。さらに、最終モデルを用いて薬物動態シミュレーションを実施した結果、本薬の用量として、体表面積が0.6 ~1.0 m2未満の場合は1 又は2 mg、体表面積が1.0 m2 以上の場合は2 又は3 mg でおよそ90%の患者さんが定常状態時の目標全血中本薬トラフ濃度5~15 ng/mL に維持されることが推測されました(図と表を参照)。また、開始用量として体表面積が1.0 m2 未満の患者では1 mg/日、1.0m2 以上の患者では2 mg/日が妥当であると考えられ、この内容は本薬の添付文書にも反映されました。ただし、薬物動態の個体差が大きいため、いずれの体表面積区分の投与量においても個々の患者での薬物治療モニタリング(TDM)が市販後も重要であると考えられており、添付文書においても「以後は、血中トラフ濃度や患者の状態により投与量を調節する」こととされています。
’’治験の対象とした疾患が希少疾患である上、さらに死亡の恐れのある患者が対象とされていたこともあり、症例数が少ないため、用量の設定に細心の注意を払う必要がありました"

担当コンサルタントの長谷川さんには、こちらのやってほしい漠然としたことを素早く理解いただき、形にして適切に解析担当者に伝えていただいて非常に助かりました。また多くの疑問点も解消していただきありがたく思っています。
今後は、さらに頑健なシミュレーションができるようデータを収集してPPKモデルをUpdateし、We would also like to develop this model into a PK/PD model for other diseases."
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